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ブログ

美しき気轉
2014-03-09
ある日の事神宮の前で參拜を終へた老婦人がタクシーを呼ばうとしてそこらぢうへ
電話しても来ない、京城まで行くので、こんどの急行に乘れないと従って連絡船に
間に合はない、連絡船も指定されたその船にのれないと何時になるのやら判らない、
困った困ったと大騒ぎ、老人ではあり皆同情してバスの停留所の係員も汗だくで
電話しても何處からも来ない。
 
いよいよバスで行くより仕方ないといふことになって老婦人はバスに乗りました。
乗客も皆この老婦人が汽車に間に合へばよいがといふので大騒ぎです。
かういふ時の皆の同情は實に美しい。
しかしバスをさう飛ばせる譯にも行かない。
運転手や車掌も大いに同情してゐるが、どうもなりさうもない。
時計を見ると十何分しかない。
高千穗通りの乗替の塲所から走って行っても間に合ひさうにない。
老婦人はおろおろしてゐるばかり、同車の人々も皆大心配であります。
然るにこの運轉手は默って高千穗通りでハンドルを左に切って驛へ
直行してしまひました。
この時、車内の人々は思はず萬歳を叫びさうな喜び方です。
 
それで老婦人は一分程の差で汽車に間に合ひ、いそゝと降車して行く。
 
乗り合わせた人々は皆
 
「よかった」「よかった」
 
「お婆さん、御機嫌よう」
 
と、己の事の様に喜び合ひ、
自分が何分かの時間を費した事など忘れて安心したのであります。
 
良い話ではありませんか。
(社報「美あかし」より 昭和15年5月1日発行)
 
その時の光景が手に取るように分かる気がしませんか???
運転手をはじめその場に居合わせた方々の思いやりの心に、読んでいて
非常に清々しくなりました。
 
明日で東日本大震災より3年。
人心の荒廃云々と言われる昨今ですが、あの震災で日本人が大切にしてきた
道徳心、思いやりの心を、再認識した方も多いのではないでしょうか。
 
家族、上司や部下、友人等々、人と接する機会は多々あります。
当たり前のことですが、人は人、自分は自分ではなく、思いやりの心を忘れずに。
そうありたいものです。
 
改めてそんな事を考えさせられた、
七十数年前のふと目に止まった何気ない記事でした・・・
宮﨑神宮
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